人材紹介事業のジェイ・エイ・シー・リクルートメントは、2022年第2四半期(4‐6月)のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向をまとめ、8月2日概要を発表した。同社の調べによると、シンガポールの求人数は対前年同期比147%、対前四半期比96%で推移した。
第2四半期中のシンガポールの国内状況については、「コロナ規制緩和後、国・地域間の往来や出張も再開され経済活動が戻ってきている。消費者物価指数も月を追うごとに上昇し、5月には前年同月比5.6%増と10年半ぶりとなる高い伸び率を示した。シンガポール通貨金融庁(MAS)の発表によると、コアインフレ率も前年同月比3.6%増となり、13年5カ月ぶりの高水準を記録し、今後も上昇圧力は続くとの見方が示された。それに伴い、シンガポール首相府公務員局(PSD)は特定職種の公務員約2万3,000人を対象に、8月1日付で5~14%の昇給を実施すると発表した。また、公的機関のリテンション対策に、民間企業も続けと昇給を検討する企業も出てきている。生活費や金利の上昇をめぐる懸念が高まっているにも関わらず、住宅不動産価格の伸びも加速しており、都市再開発庁(URA)の発表によると第2四半期の4-6月に住宅不動産価格指数は3.2%上昇した。前期(1-3月)の伸び率0.7%を上回る伸び率を示している」と説明した。
企業の採用動向については、「景気回復に伴い、企業の採用意欲も回復傾向にある。成長産業である情報通信技術(ICT)関連、市場ニーズの著しい半導体業界、医療・医薬業界を筆頭に求人需要が高まっている。さらに、中国リスクを踏まえての、香港・台湾からシンガポールへの金融関連企業の移転に伴い、金融関連業種の求人需要も高まっている。また、最近のトレンドであるFinTech、仮想通貨、ブロックチェーン、GameFi関連の企業や新規部門の立ち上げに伴う案件も増えてきており、採用市場は堅調に推移している。退職者のリプレイスメントのための求人もあるが、業績好調のためスタッフ増員の求人も多く見られた」と状況を報告した。
一方で、求職者の動向に関しては、「コロナ禍以前は、求職者の転職前後の昇給率は10%程度だったのに対し、現在は20%アップと相場が上昇しており、さらに人員不足の業界やポジションにおいては30%以上の昇給が提示されるなど、引き続き転職マーケットは『売り手市場』が続いている。ただし、内定が出ても現職からの引き留めにあい、給与アップや待遇を手厚くすることを条件に現職に留まるケースも見受けられた。日本人求職者に関しては、シンガポール在住者に加え、シンガポール国外からの転職者の登録も少しずつ戻ってきている」と状況を報告した。