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日商経済ミッション、小林健団長(会頭)らが最終訪問地シンガポールで会見

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日本商工会議所(小林健会頭=三菱商事相談役)は2023年10月22日(日)~28日(土)の日程で、フィリピン・マレーシア・シンガポールとの間の経済関係の強化と、中小企業間の交流促進を目的に、小林会頭を団長とする経済ミッションを派遣した。最終訪問国のシンガポールでは、10月27日にSwissotel The Stamfordで小林団長らが記者会見を行った。

小林団長の冒頭発言と質疑応答の概要は下記の通り。

小林団長(日本商工会議所会頭・東京商工会議所会頭、三菱商事相談役) 日商は年一回、経済ミッションを海外に派遣してきたが、コロナ禍があり、今回は4年ぶりである。参加者数は大企業・中小企業を含め日本から約70人の大ミッションとなった。

訪問国については、現在の世界情勢のなかで日本経済をということを考えた場合に、やはりASEANということになり、検討の結果、フィリピン、マレーシア、シンガポールに決まった。

フィリピンの人口は日本に近い約1億1千万人。労働人口が極めて若く、もちろん人口全体の平均年齢も29歳と若い。労働力が豊富で、経済成長しており、マーケットとしての魅力も高まってきている。

マレーシアの発展は著しい。日本企業のサプライチェーンの枢要な一角を占めており、もはやオルタナティブではない。

シンガポールは資源も何もない国だが、ここまで発展してきた。私も20年前に3年駐在したが、世界情勢、経済情勢に合わせていかにポジションを取れば良いかを常に研究、実行している国である。そして、いまはデジタル化であり、その発展は目覚ましい。

今回の3カ国訪問で、フィリピンではフェルディナンド・マルコス大統領、アルフレド・パスクアル貿易産業大臣、マレーシアではザフルル・アジス投資貿易産業大臣、シンガポールではローレンス・ウォン副首相兼財務大臣、タン・シーレン第2貿易産業大臣兼人材開発大臣とディスカッションができた。

私たちの全体的な期待はASEANアップデートということであり、大括りで何を感じたかというと、もちろんASEANもコロナで閉塞していたわけだが、20年、30年前と比べると、コロナ下でも発展度合いのスピードが早まっており、キャッチフレーズ一言でいうと、支援から共同発展ということになる。つまり昔は日本企業による支援であり、安価で豊富な労働力を使って製品を開発・生産してきたが、いまやサプライチェーンの一角であり、共同で発展するという図式に変わってきている。

なぜ、ASEANかといえば、これは各国首脳と会談してよく分かったが、自由で平等な環境、法の整備、法の下の平等、あるいは経済安全保障の面でも日本から見ても非常にインテグラル(不可欠)なところにある。

もちろん伝統的なモノづくり、あるいはインフラ整備への期待は、シンガポールを除いてあるにはあるが、それよりも再生可能エネルギー、カーボンニュートラル、イノベーション、デジタルといった部分で彼らもこれから発展していく、ともに発展していこうという気概を感じた。

経済安全保障の観点からも日本とフィリピン、シンガポールはエネルギーの安定確保という共通の視点を持っている。マレーシアはエネルギー産出国だから別だが、サプライチェーンの再構築について共通の視点が見て取れた。

今回の経済ミッションでの3カ国のリアクションと我々が感じたことを紹介したい。

フィリピンではバナナ、パイナップル等の農業の品質向上や輸送の課題解決についてだ。気候変動対応で日本からより多くの支援をという要望もあった。一方で、日本企業にとっては、VAT(付加価値税)の還付手続きで課題がまだ残っている。この点については、私からもマルコス大統領にも一言申し上げて、改善を期待するということをお願いした。

マレーシアについては、コロナは、マレーシアの産業がサプライチェーンに厳然として入っていることを浮き彫りにした。日本の製造業はマレーシアに数多く進出しているわけだが、我々のサプライチェーンの多元化、強靭化のためにマレーシアは重要な国だとあらためて認識した。マレーシア側からは再生可能エネルギー、カーボンニュートラルへの対応でぜひ日本と協業したいという要望もあった。

シンガポールでは、スマートシティの構築、デジタル化の進展の部分で、小さな国ながら日本としてもシステム、やり方、法整備に関して学ぶべきことが多いと感じた。生産性向上に欠かせない取り組みであり、この国の場合には行政手続きを効率化するために個人情報の相当程度詳しい部分まで把握して展開しているということも一つの参考となった。

また、本日(10月27日)のローレンス・ウォン副首相兼財務相との話でも、デジタル化ではシンガポールの方が一歩先を進んでいる感じもするが、日本・シンガポール双方にとって重要だという認識、両国で協力し合って、ともにデジタルで発展させていくことが必要ということで意見が一致した。

また、マレーシアでも話題が及んだが、シンガポールでもスタートアップの孵化、研究開発拠点としての期待感が大いに高まっているとも感じた。

大阪での万博の開催も近づいてきている。神戸商工会議所もいろいろ大変なので、各国元首を含めて、ぜひ万博会期中は各国の国民を日本に送ってほしい、大阪を訪れたら日本の各地もぜひ巡ってほしいと要望した。皆、快く良い返事をしてくれた。シンガポールのローレンス・ウォン副首相兼財務相は「シンガポールから行く」「シンガポール人で日本が嫌いな人はいない。日本が大好きなんだ」と言ってくれた。

メディアとの質疑応答の要旨は下記の通り。

――シンガポールに関して、今回、具体的な合意が得られたということがあれば聞かせてほしい。

小林団長 フィリピン、マレーシアでは、現地の経済団体と経済フォーラム、ラウンドテーブルを実施し、ゼネラルなものではあるがそれぞれMOUを締結した。シンガポールでは結んでいないが、シンガポール訪問の一番大きな目的は、ローレンス・ウォン副首相兼財務相にお会いして、その人のものの考え方、今後この国をいかに引っ張っていくのかを窺い感じ取りたかったということだ。方向性は、デジタルトランスフォーメーションをさらに加速するということだった。

日本とは共通の悩みもある。出生率は日本より少ない。

それから、やはりシンガポールに拠点を置いてASEANを見渡すと見える景色も違って見えるので、シンガポールにもっと進出してほしいという話もあった。

日本企業にとってはワークビザの問題などあるということを、タン・シーレン第2貿易産業大臣兼人材開発大臣にも伝えた。

――ワークビザ取得に高額な給与等が要件となり、人件費が問題になってきている。具体的にはどのような話になったのか?

小林団長 ローレンス・ウォン副首相兼財務相には、こちらからビザの問題を指摘した。タン・シーレン第2貿易産業大臣兼人材開発大臣にも、日本企業がだんだん窮屈になってきているという話をした。タン・シーレン第2貿易産業大臣兼人材開発大臣からは、いろいろ検討しているという話はあった。

私も昔、シンガポールに駐在した。いま非常に厳しくなったということを聞いている。ただ、大手企業は必要であれば飲み込んでも駐在員を派遣すると思う。一方で、ローレンス・ウォン副首相兼財務相は大企業だけでなく、日本の中小企業にも進出してほしいという話があったことからすると何か策を出してくるのではと思う。

上野孝副団長(日本商工会議所副会頭・横浜商工会議所会頭、上野トランティック会長CEO) ハードルは厳しくなったとはいえ、大企業にとっては越えられるものである。しかし、中小企業にとっては非常に厳しい項目もある。例えば、学歴を点数化して資格要件にしているわけだが、少ない人数の中で日本から人を駐在させるという時に非常に高い学歴要件を要求されると難しい。今後も、ワークビザの問題についてはシンガポールの大使館、JETRO、商工会議所を通じて、企業規模に応じた要件も考えてほしいということを、申し入れしていきたいと思う。

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