シンガポール経済開発庁(EDB)は2022年10月31日、シンガポール製造業2022年10月-2023年3月期景況感と10-12月期生産高予測を公表した。調査対象は414社で88%が回答した。
◇2022年10月-2023年3月期景況感
2022年10月-2023年3月期の製造業の景況感は、ロシア・ウクライナ紛争や中国における新型コロナウイルス対策などを背景に、企業がサプライチェーンの課題や事業コストの上昇に直面していることに加え、マクロ経済環境の悪化が需要を圧迫していることを要因として、ネガティブな状況が続いている。業況が改善すると予想した企業は8%にとどまり、28%が悪化すると予想した。全体として2022年10月~2023年3月までの正味加重残高指数(直前四半期の実際の業績と比較した先半年の景況感に対する回答『上昇』『同等』『低下』の加重割合の差)は、2022年第3四半期(7~9月)に比べて悪化傾向を示している。
セクター別では、輸送エンジニアリングが最も楽観的で、プラス36%となった。多くの国で渡航制限が緩和されたことによる航空旅行の増加を背景に、航空機のメンテナンス、修理、オーバーホール(MRO)作業の需要が高まると見込まれる航空宇宙部門が牽引した。また、陸運部門でもベンダーからの自動車部品の供給が増加し、事業環境の改善が見込まれている。
一般製造業は、マイナス4%となった。印刷業が今後のビジネスイベントや展示会の増加を見越して受注の増加を見込んでいるものの、食品・飲料・タバコ部門は、エネルギーや原材料費などの事業コストの上昇を懸念する企業が多く、事業見通しは悲観的な見方が示されている。
化学は、マイナス8%となった。その他の化学品、特殊化学品、石油化学部門は、マクロ経済の不確実性に伴う需要の減退と操業コストの上昇が懸念されている。
バイオメディカルは、マイナス16%となった。医療技術、医薬品分野ともに、サプライチェーンの制約、原材料やその他の営業コストの上昇といった要因が引き続き事業運営に重くのしかかると予想している。
精密エンジニアリングは、景気の悪化と断続的なコスト上昇による機械・システム部門の悪化の影響が大きく、マイナス26%となった。特に半導体関連装置業界では、米国による技術輸出規制の影響を受けて受注が弱含みになると予想されている。
エレクトロニクスは、最も悲観的でマイナス37%となった。半導体やコンピュータ周辺機器・データストレージ部門で、特にPCやスマートフォン市場の消費者需要の急速な軟化が懸念材料となった。
◇2022年10—12月期生産高予測(7‐9月期比)
輸送エンジニアリングと一般製造業は今後3カ月間の生産水準の上昇を予想しているが、その他は生産の減少を予想している。全体ではマイナス17%となった。
セクター別では、輸送エンジニアリングは、プラス14%となった。陸運部門は、供給不足緩和による自動車用製品の増産を予想している。航空宇宙部門では、民間航空会社からの航空機エンジン修理の需要が高まると予想している。
一般製造業はプラス11%となった。食品・飲料・タバコ部門は、年末に向けた祝祭シーズンの需要を見越した増産を見込んでいる。その他の製造業では国内の建設需要を背景に建設関連資材の増産を予想している。
精密エンジニアリングはマイナス18%となった。機械・システム部門は需要の軟化による半導体装置の減産を見込んでいる。一方、精密モジュール・コンポーネント部門はボンディングワイヤーや光学製品の増産を予想している。
エレクトロニクスは、マイナス36%となった。半導体とコンピュータ周辺機器・データストレージ部門では、コンシューマー向け電子製品の需要低迷と小売り市場での在庫調整により、減産を見込んでいる。
◇2022年10—12月の雇用予想
製造業の大半(82%)の企業が2022年第4四半期の雇用水準が2022年第3四半期と同様の水準になると予想している。6%の企業は雇用が増加すると予想している。特に、輸送エンジニアリング、一般製造業、精密エンジニアリング、化学部門では、雇用の増加が見込まれている。