組織・人事コンサルティングの米マーサーは、恒例の「2020年世界生計費調査(Cost of Living Survey)– 都市ランキング」の結果を発表した。同調査は今年で26年目で、今回は世界400都市以上で実施し、このうち209都市の住居費、交通費、食料、衣料、家庭用品、娯楽費用などを含む200品目以上の価格を調査し、それぞれを比較した。なお、金額は公開していない。
香港が、香港ドルが米ドルに対してほぼ固定されていることと生計費の上昇によって、昨年に引き続き駐在員にとって最も物価の高い都市のトップとなった。トップ10にはアジアから6都市がランクインした。東京は昨年から順位を1つ下げ3位、シンガポールは2つ下げ5位となった。また、ニューヨークは3つ上げ6位だった。
同社は、シンガポールが順位を下げた要因について「米ドルの価値がシンガポールドルに対して上昇した。ニューヨークと比較してインフレ率も低かった」と分析している。
なお、マーサーはデータを3月に収集し、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、物価を検証する目的で4月と5月に物資の入手状況に関する追加の分析を行ったが、「多数の赴任地においてパンデミックの影響による物価の著しい変化は見られなかった」という。
マーサーのキャリア部門プレジデントのIlya Bonic氏は、「国境閉鎖、航空便の運航停止、強制的な外出制限、その他の短期的な障害や混乱は、物価のみならず、海外赴任者の生活環境にも影響を及ぼしている。我々は新型コロナウィルスのパンデミックによって、社員を海外へ派遣、赴任させることには大きな責任が伴い、管理の難しいタスクであることを再認識した。今後企業は、海外派遣を一斉に復活させるのではなく、海外赴任者の再配置に備える必要があり、また、すべての海外赴任者が前向きな気持ちがあるわけではないことを理解したうえでリードしていく必要がある」と指摘した。
また、マーサー・グローバルモビリティプロダクトソリューションズのリーダーであるYvonne Traber氏は「為替レートの急激な変動は、主に新型コロナウィルス感染症の世界経済への影響によるものだ。この変動は生活必需品の不足や価格調整、サプライチェーンの途絶だけでなく、海外赴任者が本国通貨で支払いを受け、任地で生活する上で赴任国の通貨に両替する必要がある場合など、様々なかたちで赴任者に影響を及ぼしかねない」と指摘した。