千代田化工建設は2022年10月25日、シンガポールのSembcorp Industries Ltd.および三菱商事と、千代田化工建設の水素貯蔵・輸送技術(SPERA水素)を活用したシンガポールにおける水素サプライチェーン事業化に向けた詳細検討に関わる覚書を締結した。
SPERA水素は、液体有機水素キャリア(Liquid Organic Hydrogen Carrier: LOHC)としてのメチルシクロヘキサン(MCH)を指し、千代田化工建設が独自開発した脱水素(MCHから水素を取り出す)触媒を用いて水素を輸送・貯蔵する技術の核になる。MCHは常温・常圧で液体であり、化学的にも安定しているため取り扱いが容易で、既存の石油・石化製品の規格やインフラを活用できる。シンガポールでもMCHの安全性、既存インフラ活用で投資負担を抑えられることによるコスト競争力の優位性などが評価されているという。
3社は2021年10月にシンガポール国内における商業規模でのクリーン水素サプライチェーン事業の調査及び実現に向けた戦略的提携に関する覚書を締結し、具体的に議論・検討を進めてきた。
今般、さらに具体的な技術的・商務的検討を進めることに合意し、新たに覚書を締結した。現在までの初期の検討を踏まえて、3社はPre-FEED(概念設計)を含むクリーン水素サプライチェーン事業の技術面・概略費用など商務面の更なる検討、協議を行い、サプライチェーン事業の最終投資決定にむけ詳細検討を加速する。
同事業は、「SPERA水素」技術を利用して、クリーン水素を豪州や中東などの再生可能エネルギー生産国からシンガポールに輸送する。Sembcorp社のジュロン島のガス火力発電施設との相乗効果が期待されている。
2026年に商業運転が開始された場合、年間約6万トンの生産量を誇るアジア最大のクリーン水素供給事業になる。これは、約100万メガワット時の再生可能エネルギーを生成することに相当し、シンガポールの既存の再生可能エネルギー生産量の2倍という。