マルハニチロなど7機関は2019年5月21日、山形県遊佐町の陸上施設で養殖していた「サクラマス」が出荷できるまでに成長したとして100尾を水揚げし、このうち30尾を庄内空港から羽田・那覇両空港経由でシンガポールに空輸した。シンガポールに到着したサクラマスは22日夕方までに、北欧のサーモンに代わる高品質養殖サーモンを求める高級レストラン数店に届けられ、シェフらが品質を吟味した。
サクラマスの養殖は2017年9月に始まり、11月に入れた稚魚(魚体重200~300g・体長20~30㎝)約2,000尾のうち、7カ月の間に体長50~60㎝・魚体重2㎏前後に成長した100尾程度を出荷した。
マルハニチロ広報部によると「陸上養殖事業を検討するにあたり、世界商材である鮭鱒類に着目し、ノルウエーサーモンとの差別化が可能な日本のサクラマスを選択した。北欧やチリの養殖は海面生簀を使用した大規模事業だが、遊佐町では循環型陸上水槽で飼育する。魚病の発生がないため薬剤は一切使用しない。脂ののり方は上品で、しかも個体差が少なく、清澄な海水で飼育しているので魚臭さもない。外国人に受け入れられ易く、あらゆる料理に適している」とのこと。
また、マルハニチロ中央研究所の椎名康彦副部長は「採算を考えると現在より高密度で飼育するのが理想的。期間も半年余りで出荷できるようにしたい」と飼育条件を研究しながら輸出競争力をもつ陸上養殖モデルの確立を急ぐ考えだ。
マルハニチロ広報部は、「実証試験で成果が得られれば事業化に着手する。地元山形県の県魚としての復活はもとより、世界市場で評価されるメイド・イン・ジャパンの高品質な魚を増産していく」と意気込んでいる。