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岐阜大学、シンガポールのバイオベンチャーにRAS阻害剤のライセンス供与

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岐阜大学は、大学院連合創薬医療情報研究科の本田諒・助教らが開発したRAS阻害剤について、シンガポールのバイオベンチャーTara Therapeutics Pte.Ltd.(CEO:Teng Cheong Thye)と、全世界における独占的開発・製造・販売ライセンスの供与と共同開発の契約を締結した。2021年11月22日発表した。

Tara Therapeutics社は2020年11月に既存のバイオベンチャーから開発中の抗がん剤、プラットフォーム技術やノウハウを切り離す形で設立され、遺伝子と免疫に関わる癌と慢性疾患領域に特化した開発を行っている。薬事戦略や臨床開発の知見を持ち、日本の大学やシンガポール政府研究機関A*Starを含む世界中から優れた研究テーマを取り込み、一刻も早い市場化のために最適で最速な開発を推し進め、世界に向けて医薬品を市場化していくことを掲げている。

発表によると、RASは細胞が増殖するために必要な増殖シグナルを伝達するタンパク質の一種で、正常な細胞では増殖しすぎないようにRASによる増殖シグナルのスイッチのオンとオフが厳密に制御されているが、このRASに遺伝子変異が起こると増殖シグナルのスイッチが常にオンになり細胞が無限に増殖するがん細胞に変化する。

今回開発されたRAS阻害剤はKRAS遺伝子変異をターゲットとする抗がん剤。従来型タンパク質医薬とは異なる“細胞膜透過性タンパク質”というユニークな分子で、これまで困難とされてきた細胞膜への透過機能をもつ。

RASの一つであるKRAS遺伝子変異は、がんで最もよく見られるドライバー変異の1つとして、発現頻度は膵がんの95%以上に確認されるほか、大腸がん、肺がん、多発性骨髄腫、子宮体がんなどでも多く確認されるという。

また、RASタンパク質に対する特異的な結合能も併せ持ち、これまでマウスなどの実験動物を用いて生体内に直接被験物質を投与し生体内で薬効を調べるin-vivo試験において有意な抗腫瘍効果を示すことができているという。

これまでに承認されているRAS阻害剤はKRAS G12C変異のみを対象としているが、今回開発されたRAS阻害剤はG12C変異のみではなく、G12V、G12Dなど全てのKRAS変異型がんに対して抗腫瘍効果を示している。

G12C以外のKRAS変異を対象とする阻害剤は、臨床開発段階のものは世界にまだ一つもない状況で、岐阜大学は、「今後Tara社と共に一刻も早い臨床試験に向けて共同で開発を進めていく」としている。

なお、RASタンパク質の表面は、薬剤が結合・作用できる構造に乏しいことから創薬は困難と言われてきたが、構造の詳細な解明が進んだことで今年6月に米国で初めて製品が市場化され注目が集まっているという。

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