川崎汽船は2023年1月4日、明珍幸一社長の年頭所感を公表した。
冒頭、明珍社長は「今期の決算は過去最高益を更新する見通しである。ドライバルクセグメント、エネルギー資源輸送セグメント、自動車船事業を始めとする製品輸送セグメントにおいては、前期に取り組んだ船隊規模適正化や不採算事業の整理など構造改革によるコスト競争力の回復に加えて、各事業部門による収支改善に向けた弛みない積み重ねが実を結びつつある。上期を中心に市況が高水準で推移したコンテナ船事業においても、3社のベストプラクティスが現出し、統合効果が大きく発揮された」と記した。
また、2022年5月公表した新たな中期経営計画について言及し「低炭素・脱炭素化社会の実現への貢献と収益成長を両立させるため、川崎汽船グループの強みを最も活かせる事業領域をさらに磨き、成長を牽引する役割を担う鉄鋼原料船、自動車船、LNG輸送船の三事業に経営資源を集中的に配分する」と強調。「鉄鋼原料船では、Emirates Global Aluminium社と脱炭素化に向けた共同研究・包括協議に関する覚書を締結した」、「LNG輸送船事業では、マレーシア国営石油ガス会社ペトロナスグループ向けLNG船2隻を竣工させるなど拡大するアジア市場の需要の取り込みを着実に進めている」、「自動車船事業では、LNG燃料や代替燃料によるゼロエミッション船の投入など燃料転換ニーズを積極的に捉え、運航船舶の環境対応を進めることで、既存完成車メーカーへの輸送基盤の拡充を図る。同時に新興BEV(バッテリー式電気自動車)メーカーなど拡大する新たなアジア市場の需要の取り込み、High&Heavy(背高・重量)貨物の着実な増量を進めている」などと進捗を説明した。
また、「川崎近海汽船と共同で設立したケイライン・ウインド・サービス(KWS)社を通じた洋上風力発電支援船事業においても、五洋建設との覚書締結のように内外のパートナーとの協業によって、国内およびアジアにおける需要に対応し、海運会社としてのノウハウを活用した幅広いサービスの提供に取り組む」とした。
そして、水素やアンモニアなどの新エネルギー輸送需要に向けた研究、準備、さらに液化CO2輸送などを推進していくことなどにも触れたうえで、「これらの中計達成のために必要な環境・技術、安全・船舶管理、輸送品質を磨くため、人材の確保・育成、そしてデジタル社会への対応など機能強化が何より重要となる。今後の成長市場の一つとして位置付けているアジア地域で機能戦略拠点としてK Marine Ship Management (KMSM)社を新たにシンガポールに設立。高品質で安全安心な船舶管理サービスの提供とともに、環境技術に関する提案など地域に根付いた顧客密着型のサポート体制を強化し、今後は米国、欧州にも展開していく」と記した。