半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(スイス・ジュネーブ)は、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)の研究機関で学術と産業の研究開発における橋渡し役であるInstitute of Microelectronics(IME)と、車載および産業機器向けSiC(炭化ケイ素)パワー半導体の研究開発で協力する。シンガポールに包括的なSiCエコシステムの基盤を作り、さまざまな企業がSiCの研究開発で、STマイクロエレクトロニクスおよびIMEと連携する機会を創出する。2021年12月7日発表した。
発表によると、SiCソリューションは、電気自動車(EV)および産業機器向けパワー・エレクトロニクスにおいて、従来のシリコン(Si)製品を上回る性能を実現するとともに、パワー・モジュールの小型化や高出力化、より高温環境での動作へのニーズに対応できる。
STマイクロエレクトロニクスとIMEは、パワー・エレクトロニクスの大幅な性能向上を実現する集積型SiCデバイスやパッケージ・モジュールの開発および最適化に向けて協力する。
パワー・エレクトロニクスは、電子デバイスを用いて電力制御および電力変換を行う技術で、現在は主にシリコン製品が使用されているが、次世代パワー・エレクトロニクスでは、電力変換で優れた特性を示すSiCをはじめとするワイド・バンドギャップ半導体の採用が期待されている。優れた電力効率と小型化を実現するSiCパワー半導体は、EVのエンジンであるトラクション・インバータや、オンボード・チャージャ、およびDC-DCコンバータ(高圧の主電源から低電圧に電力を変換し、ヘッドライトや車内照明、ワイパーおよび窓のモータ、ファン、ポンプなどに電源を供給)など、EVの主要システムの低消費電力化に貢献するという。
IMEのエグゼクティブ・ディレクターであるDim-Lee Kwong教授は「今回の取り組みは、高付加価値の研究開発事業をシンガポールに定着させるとともに、研究、イノベーション、事業活動にとっての魅力的な拠点として、シンガポールの評価を高めるものだ」とコメントした。
STマイクロエレクトロニクスのパワー・トランジスタMACRO事業部ジェネラル・マネージャ兼オートモーティブ&ディスクリート製品グループのEdoardo Merli上級副社長は、「当社がカターニャ(イタリア)に加えてシンガポールでの生産を強化する中、IMEとの新たな協力は、シンガポールにおけるSiCエコシステムの成長を加速させるものである。複数年にわたる今回の協力は、カターニャおよびノルショーピン(スウェーデン)で進む既存プログラムに加え、SiCのバリュー・チェーン全体に対応するグローバルな研究開発活動の拡大に貢献する。また、IMEのワイド・バンドギャップ半導体、とりわけSiCに関する知識と専門性は、幅広いアプリケーションにおいて、持続可能なモビリティとエネルギーの高効率化という課題に対応する新たな技術や製品の開発を加速させるものだ」とコメントした。