北海道大学と理化学研究所は2021年7月7日、北大・遺伝子病制御研究所とシンガポール国立大学(NUS)を兼任する茂木文夫教授、NUSのYen Wei Lim博士課程学生(研究当時)、理研・生命機能科学研究センターのFu-Lai Wen基礎科学特別研究員(同)、Prabhat Shankar研究員(同)、柴田達夫チームリーダーらの国際共同研究グループが、細胞が分裂する際に「対称分裂」または「非対称分裂」のどちらかを選択するメカニズムを明らかにしたと発表した。
同研究成果は、日本時間2021年7月7日公開のCell Reports誌にオンライン掲載された。
発表によると、ヒトを含む多細胞生物では、体づくりの過程で細胞分裂が活発に行われ、受精卵は分裂を繰り返して多様な細胞種を生み出し、それぞれを増殖させることで細胞集団の組織をつくるが、細胞分裂には二つの異なる様式が存在することが観察されていた。
「対称分裂」では、大きさや性質が同じ娘細胞が生み出され、「非対称分裂」では異なる大きさや性質を持った細胞が形成される。
「非対称分裂」は細胞種の多様性を促進し、「対称分裂」は組織の大きさを定義するため、分裂様式の選択は体づくりにおいて精密に調整される必要があるが、同研究グループは線虫(C.elegans)の胚発生において「対称分裂」する細胞と「非対称分裂」する細胞を比較解析することで、二つの分裂様式は「細胞極性因子PAR複合体の相互作用による自律的な空間パターン形成」に依存していることを突き止め、さらにPAR複合体の相互作用を変動させることで二つの細胞分裂様式を人為的に操作できることを実証し、これらの結果からPAR複合体が自律的にパターン形成する能力が分裂様式の使い分けに重要な役割を果たしていることを解明した。