ソニー生命保険は、2021年公表した海外子会社(英領バミューダ)における不正送金と、シンガポール子会社Sony Life Financial Advisers Pte.Ltd.(SLFA社)における不正出金事案について再発防止策を策定し、概要を公表した。
ソニー生命保険は両事案の発覚後、代表取締役社長を本部長とする、調査・資金回収等を目的とする「調査渉外対策本部」と、社内管理態勢の総点検および再発防止策策定を目的とした「総点検対策本部」を設置し、両事案の原因分析や再発防止策に特化した検討・審議を継続的に行ってきた。
なお、事案に関与した社員については社内規定に基づき厳正に処分(懲戒解雇)するとともに、経営責任を明確にするため、代表取締役社長をはじめとする取締役等の役員については、役員報酬の一部を返上することとした。
ソニー生命保険は「今後、このような事案を二度と発生させないように、再発防止策を着実に、かつ、速やかに実行するために、その責任部門を定めるとともに、その定着状況を定期的または随時モニタリングし、グループにおける一層の内部統制強化に努めていく」としている。
SLFA社における不祥事案についての報告は下記の通り。
事実認識
(1)概要
シンガポールで保険代理店業務を行っている子会社SLFA社において、元社員が2019年8月から2021年4月にかけて小切手を使った事業費の不正出金を複数回行っていたことが社内調査で2021年8月上旬に判明した。
元社員は、財務担当者として単独で小切手の払出権限があったことから不正な資金払出を行った。また、発覚を阻止するために銀行の取引明細の改ざん、架空の請求書偽造や財務関連書類の改ざんを行い、1年半以上に亘って合計で約4,000万円の不正出金を行った。
(2)事実の整理
・元社員は資金の払出権限を有していたため、単独で小切手を振り出すことが可能であった。
・SLFA社では、小切手による資金決済を行う業務がないなか、現地慣習に従って小切手帳が発行され、当該小切手帳は施錠管理をしていたものの通常業務で使用しないことから、その管理方法や適切な引き継ぎ手順が定められていなかった。
・元社員は不正出金の発覚を阻止するため、財務諸表や銀行口座証明書、取引明細書等の改ざんや取引先からの請求書、社内決裁書面の偽造を行った結果、1年半以上に亘り不正が発覚しなかった。
原因分析
(1)不正防止のための内部統制の不備
▽資金払出統制の不備
業務運営上は小切手帳を使用しないにもかかわらず、異動に伴う引継ぎを行った際、代表者不在時の対応を行うことを目的に代表者と財務担当者であった元社員の2名にそれぞれ資金払出権限を付与したことから、元社員が単独で資金払出が可能な状態となっていた。
なお、小切手帳は施錠保管されていたが、小切手を利用した資金決済を行う業務がないため、その管理方法や引継ぎ時の手順を定めておらず、また、小切手に係る業務がないことからソニー生命保険においてSLFA社を管理していた部門においても認識していなかった。
▽人事面での不備
取締役の選定に際し、海外子会社等の業務経験を優先し、マネジメントの観点からの評価が不十分となっており、内部管理面よりも業務運営を重視した人選となっていた。
(2)倫理面に関する教育の徹底およびマインドの醸成不足
元社員は、私的な金銭欲求のもと、内部統制の不備を把握したうえで、自らの地位、立場を利用して不正行為に及んだものと推察している。 このように、倫理面が浸透していない一部社員の存在や不正を思い留まらないマインドが事案発生の原因でもあり、社員の倫理面に着目した管理、教育が不十分なものとなっていた。
主な再発防止策
(1)内部統制の整備・強化に係る主な再発防止策
①社員情報管理強化
社員情報の管理が不十分であったことが承認権限の偽装が可能となった要因の一つと考えられることから、本社全部門および子会社に対して、社員情報の管理状況について確認を実施し、特に社員の本人確認書類(パスポート等)についての管理を強化し、周知徹底した。
②資金払出統制の強化
日次での銀行口座残高確認の徹底に加え、Webバンキング等でのID管理強化等のため、海外子会社によるID登録状況の定期的な棚卸を実施するとともに、その結果を海外子会社管理部門および本社管理部門が検証することとした。 また、海外子会社における資金管理および会計業務にかかる規程(権限分離、手続きや役割の明確化)の整備を実施している。
③人事面での強化
子会社取締役選定基準の策定、資金払出業務部門の管理職の定期異動に向けた取り組み、採用時における倫理観を確認するテストの導入等を行うこととした。
(2)倫理面、マインド醸成に係る主な再発防止策
これまで実施してきた行動規範研修やコンプライアンス研修に加えて、今後は全社員に対して不正防止に着目した社員研修を実施し、かつ社内外で発生した不正事例も踏まえ部門別にディスカッション等を実施し、リスク感度の向上や職業倫理、コンプライアンス意識の更なる醸成を図っていく。