シンガポールのバイオベンチャーTara Therapeutics Pte. Ltd.(CEO:Teng Cheong Thye)は2021年11月4日、科学技術振興機構(東京都、JST)より、癌治療の開発薬Nek2siRNAにかかるJSTが保有する特許権の全世界における独占開発・製造・販売ライセンスを受けたと発表した。
Nek2siRNAは、名古屋大学医学部附属病院ゲノム医療センターの國料俊男准教授らが開発。癌特異的遺伝子の一つであるセリンスレオニンキナーゼ(Nek2)を標的としたRNA干渉法により発現を抑制する核酸医薬siRNAによる世界初の癌治療薬で、既に切除不能な膵癌の患者への投与を行なっているという。
核酸医薬開発では、siRNAの分子量の大きさや負電荷による膜透過性の低下から細胞内への取り込みへの難しさや薬効の生体内における安定性や有効性への課題を解決しなければならないが、Tara Therapeutics社は薬物送達技術や投与法の工夫により、これら課題を解決して市場化を図る。具体的には、今後、有効な治療法がない膵癌の腹膜播種疾患に対して、ナノテクノロジーを付加し病巣へ届けうるための送達デリバリー機能を有したNek2siRNAを、医薬品医療機器総合機構(PMDA)など当局と薬事相談を行い承認に向け国際共同臨床試験を進めるとしている。