昭和電工は、シンガポールのSeagate Singapore International Headquarters Pte.Ltd.と、ハードディスクドライブ(HDD)の次世代記録技術である熱アシスト磁気記録(HAMR)に対応した次世代ハードディスクメディア共同開発契約を締結した。2021年6月10日発表した。
発表によると、HDDの記憶容量を増大するためにはHDメディアの高密度化が必須だが、そのために必要な「微細な粒子構造」、「耐熱揺らぎ性能」、「磁化のしやすさ」の3要素を同時に満足させることは難しい。この磁気記録のトリレンマを解決するために記録時に磁性膜を局所的に加熱して記録を助けるのがHAMR方式で、HAMRにより、従来の磁気記録方法を用いたHDメディアの記録密度が約1.14Tb/in2であるのに対し、将来には5~6Tb/in2を実現できるといわれ、同じディスク枚数であれば3.5インチHDD1台当たり70~80TB程度の記録容量が実現可能と想定されているという。
昭和電工は、HAMRに対応した技術としてFePt合金の超高温規則化温度を実現しつつ量産を可能とするメディア製造技術に目途をつけ、FePt新磁性体を開発した。
Seagate社は、HDD業界においてHAMR対応HDDの技術開発を長年リードしてきており、今後、両社間で締結した共同開発契約に基づき、昭和電工が開発したFePt新磁性体および昭和電工とSeagate社が将来共同で開発する同磁性体を評価する。
今回の協業により、両社のHAMR対応HDD関連技術の開発スピードは加速するとしている。
第5世代移動通信(5G)のサービス開始、IoTの普及やテレワークの浸透、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展・拡大などにより、データ量は今後も飛躍的に増大することが見込まれている。データを保管するデータセンター向けHDDの1台当たり記憶容量の増大が重要な課題となってきているという。