シンバイオ製薬(東京都港区)は、抗ウイルス薬ブリンシドフォビル注射剤(brincidofovir IV、BCV IV)のエプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)陽性リンパ腫に対する抗腫瘍効果とその機序の探索に関して、シンガポール国立がんセンター(NCCS)と共同研究契約を締結した。2021年9月1日発表した。
発表によると、EBウイルスは1964年に主にアフリカでみられる小児腫瘍から発見された腫瘍の原因となるウイルスで、乳幼児期に感染した場合、多くは症状が出ないが、思春期以降に初めて感染すると発熱やのどの痛み、リンパ節の腫れなどの症状が一時的にみられ、一部の悪性リンパ腫や上咽頭がんなどの発生とも関連がある。
BCVは欧米では既承認・販売されている抗ウイルス薬シドフォビル(CDV、日本は未承認)の脂質結合体として新しい作用機序を持ち、広範囲のDNAウイルス感染症に対する有効な治療方法となりうると期待されているという。
NCCSメディカルオンコロジー部門指導医兼主任研究者及びDuke-NUS Medical School臨床助教授のDr. Jason Y Chanは、「共同研究は、BCV IVのEBウイルス陽性リンパ腫に対する作用機序の解明を目的としている。共同研究から得られる知見を基に、BCV IVの治療効果が期待できる悪性リンパ腫の患者を対象とする臨床試験に進みたい」とコメントした。
シンバイオ製薬の吉田文紀社長兼CEOは「BCVは、二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスに対する幅広い、かつ高い抗ウイルス作用があり、dsDNAの一つであるEBウイルスに関連する疾患への効果が期待される。共同研究により、新たな治療方法の開発に展開していく」とコメントした。
なお、共同研究が2021年12月期業績予想に与える影響はないという。