レゾナックは、インド太平洋経済枠組み(IPEF)に加盟する14カ国43名の視察団を川崎事業所(川崎市)の「プラスチックケミカルリサイクル事業」(KPR)で受け入れた。2023年8月31日発表した。
KPRは2003年にアンモニア原料となる水素を生産する目的でガス化ケミカルプラントとして誕生した。使用済みプラスチックを原料に、高温でガス化し分子レベルまで分解して水素とCO2を取り出し、水素やアンモニアなどの化学品原料にリサイクルしている。運転中に化石燃料をまったく使わないため熱交換率は100%。使用済みプラスチックのガス化ケミカルリサイクルを長期商用運転している世界で唯一のプラントで、20年間で既に100万㌧を超える使用済みプラスチックをリサイクルしてきた。
世界では回収されたプラスチックごみの79%が埋め立てあるいは海洋等へ投棄されており、世界のプラスチックのリサイクル率は9%だが、日本では24.8%に上っている。
2023年5月に米国・デトロイトで開催されたIPEFの閣僚会合では、「水素イニシアティブ」が日本とシンガポール主導で立ち上げられた。同イニシアティブは脱炭素燃料として注目される水素のサプライチェーン構築を目的としており、IPEFメンバー国の交渉担当者や関係省庁担当者、民間のステークホルダー向けに、官民セクターの現状と課題を紹介する「IPEF協力プログラム~IPEF ジャパンウィーク~」が8月28日~31日に行われた。このIPEF協力プログラムにおいて、KPRに受け入れの要請があり、視察が実現した。
IPEF加盟国は、米国、日本、豪州、ブルネイ、フィジー、インド、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムの14カ国。
レゾナックの担当者はシンガポール新聞の取材に答え、「日本は拡大生産者責任に基づく『容器リサイクル法』が1995年から施行されており、リサイクルの制度が海外に比べ整っていたが、技術課題が山積しており、拡大途上にある。一方、特に海外ではプラ処理は埋立が主流で、技術・ノウハウは勿論、初期投資やランニングの手間や費用が必要となるケミカルリサイクルが進んでこなかったと考えている。ここ10年の間にマイクロプラ含めプラ処理問題の顕在化、バーゼル条約を機に各国各々プラを自国で処理する必要が出て来た中で、世界的な脱炭素(資源循環)要請も一気に進んで、プラリサイクルの価値が向上してきており、プラリサイクルが浸透する土壌ができてきたと考えている」と補足した。